くものちゅいえこ


『くもの ちゅいえこ』

森川成美/作 佐竹美保/絵 (PHP研究所)1155円




なんとも、いじらしく、かわいいくものお話にうるっときました。


くものちゅいえこが大風にのってやってきたのは古道具屋。

そこで、安心できる居場所を見つけ、自分のお城を築きます。

けれども、お城はなくなってしまい、

ちゅいえこの新たな試練が始まるのです。


自分の意志とは関係なく、いろいろな要因で流されることって

私たち人間には多々あることですよね。

そこで、一生懸命に自分の居場所を作って、ほっとしたのもつかの間、

作ったものをすべて失ってしまう、なんてことも少なくないはず。


必死に作ったものがだめだと、また立ち上がるのにかなりの勇気と

パワーが必要になります。


もう立ち上がれないかもしれない、そんな気持ちにもなるでしょう。


この物語では、お城を失ってがっくりしているちゅいえこに、

古い扇風機が言います。


その言葉をここに書きたいけれども、書いたら、物語の核となるものを

明かすことになるので、やめておきます。


私の場合で言うなら、

長い時間をかけて一生懸命に書いたものがボツになった時、

この言葉を思い出そうと思いました。


ボツになるって、かなりへこむことなんです。

でも、この言葉があれば、またがんばれる。

私はこの言葉をお守りにして、書き続けようと思いました。


ちゅいえこも扇風機の言葉を胸に、がんばります。

自分だけのためでなく、時を刻まなくなった置き時計のために

がんばるのです。


私は読みながら、けなげで、やさしいちゅいえこを応援していました。


子どもだけでなく、大人も励ましてくれる、

とてもとてもあたたかい幼年童話です。




ari sasaki