海のむこう


『海のむこう』

土山優 文   小泉るみ子 絵 (新日本出版社) 1500円+税

umino


北国の浜のくらしが、とつとつと語られる。

短い夏がおわり、かけ足で秋が過ぎ、

そして、冬がやってくる。


重くのしかかるような雪雲。

吹雪や波が海に入るものをこばみ、

人間にそれ以上遠くを見通すことを許さない。

雪に閉じ込められたような毎日。


閉塞感からか、あるいは若者として成長していく証か、

主人公はここでない、どこかにあこがれる気持ちを抱く。


けれども、冷たく閉ざされているからこそ、家のなかのあたたかさが際立ち、

ほうっと、息をつきたくなる。


読んでいると、音やにおい、冷たさ、ぬくもりが伝わってきて、

なつかしいような心地になる。


かつて、北欧文学の翻訳家にインタビューした際、

長く暗い冬のある国では、まわりの人々と助け合わなければ、生きていけない。

子どもも早くから役割が与えられ、生きる術をつかみとっていく……

というような話をうかがったが、そうした北欧のくらしと共通する気配を感じた。


そうして冬を乗り越えたからこそ味わえる、春のおとずれ。


短い文と絵で、これほどの情感を表現できるのかと、驚いた。


上質な短編映画を見たかのような余韻が残る絵本だ。



ari sasaki