グッバイ山でこんにちは

『グッバイ山でこんにちは』

間部香代・作 山口マオ・絵 (文研出版)1300円+税

33194251


これはもう、児童書という枠では語れない本です。


自分の経験に引き寄せて言葉の意味を考える哲学があり、

言葉遊びやユーモアがあり、

主人公の成長があります。


ナンセンスだけども、それだけじゃない。

言葉のセンスの良さ、突飛なようできちんとつながっていく展開、

もはや「間部香代」ジャンルとしかいいようのない

新しい児童文学だと感じました。


物語は、サルのピエールが当たり前と思っていることを

変えようとすることに始まります。


そこにあるのが当たり前で、だれもその向こうを知らないグッバイ山の

向こうの景色を見るために、ひとりトンネルを掘り始めるのです。


けれども、ひとりではありませんでした。

様子を見に来る友だちや、差し入れをする友だち、

いっしょにトンネルを掘ってくれる友だちと、

いろいろな目的を持った友だちと会話し、考える日々を重ねていきます。


ピエールが最初に思ったのは、

「そうだ、ぜんぶ、山のむこうにあるんだ。きのうとはちがう今日とか、

なにかとっても大切なものとか。」

ということでした。


まさに、自分探しのはじまりです。

そうして、はじめたことの結果はどうなったのか……。


章のタイトルも哲学なのですが、

ところどころにぐっとくるセリフが散りばめられていて、

つぶやいてみたくなります。


たとえば、右と左の手触りがまったく違う手袋をもらったときの言葉。


「その幸せは、多いとか、少ないとか、大きいとか、小さいとか、高いとか、低いとか、そういうことでは表せない、じんわりとしたものでした。」


そうだ。たぶん、幸せってそういうものなんだと、納得して、

じんわりとあたたかくなる、

そんな言葉がたくさん詰まっている物語。


恋愛や仕事につまずいたとき、

目標が見つからずにもやもやしているときなどに読むと、

より一層、はっとする言葉が見つかるはずです。


児童書の棚にだけ置くのはもったいない。

大人の、人生哲学を求める人にもすすめたい本です。



ari sasaki