アサギをよぶ声


『アサギをよぶ声』

森川成美/作 スカイエマ/絵 (偕成社)1470円



自分が思うような状況にない時、つい、思ってしまうことがある。

もしも○○だったら、もっと○○になれるのに……


物語の主人公アサギと母は、アサギが生まれる前に起きたなにかが原因で、

村の中で虐げられている。


母の口グセは「おまえが男だったらよかった」「おとうさんは戦士だったのに」。

男で戦士であれば、その家は村で分けるものの取り分増えることになるからだ。


母の不満の矛先は、いつもアサギに向かう。

こんな風に、いつも責めを突きつけられれば、

悪いのはすべて自分のせいだと思い込み、萎縮してしまうのではないだろうか。


だが、アサギはそのまま縮こまって終わる娘ではなかった。

自分でも意識しないうちに、戦士になりたいと強く思うようになり、

どんなに小さなことでも戦士になるのに役立つと思えば、

必死で食らいつき、モノにしていく。


努力したからといって、それで報われるほど、世の中は甘くない。

それでも、何もしなかった時より、確実になにかが変わっていく。


本書を読んで、あらためて突きつけられたことがある。

環境や状況のせいにして言い訳を連ねても、なにもならない。

その先の生き方を切り拓くのは、自分しかない、ということだ。


アサギには、迷いそうになる時に聞こえる声がある。

アサギだけに与えられた霊的な力といえば、そうなのかもしれないが、

たぶん違う。


なにかを選ぶ時、自分の行動を決める時、

人の言うことや、人の評価を気にしてばかりいると、見失ってしまうものがある。


今ここで自分ができることは何なのか。

思い込みを除き、置かれた状況を冷静に判断して、最善を尽くす。

その心持ちがなければ、聞こえてこない声なのではないだろうか。


本書で、アサギの挑戦はひとまず結果を出したが、これだけでは終わりそうもない。


他の村との争いの火種がくすぶっている感じがあるし、

村での立ち位置を変えたアサギがこの先、どんな未来を切り拓いていくかも

気になる。


次作を早く読みたい〜。


ari sasaki