おたまじゃくしのたまちゃん

『おたまじゃくしのたまちゃん』

深山さくら/作 山本祐司/絵 (佼成出版社 1200円+税)

33053265


さやさや池にくらす、おたまじゃくしのたまちゃん。

いつも一緒に遊んでいた友だちは、つぎつぎに足がはえ、大人になっていきます。

なのに、たまちゃんは、いつまでたっても変わりません。


病気なのかな? へんなのかな?


たまちゃんの不安な気持ちが、まっすぐに伝わってきます。


自分はみんなと違うのかな? 遅れているのかな?という思いは、成長過程ではだれもが経験すること。

たまちゃんに、そのまま自分を重ねて読む子も多いでしょう。


また、本書はさやさや池をめぐる季節がていねいに描かれていて、

池の上を風が渡る様子や、水のゆらぎなども感じることができます。


水草のあいだを泳ぎ、池の上の世界にあこがれてと、

おたまじゃくしの世界を体感している気分になりました。


ここのところ、季節を感じる余裕がなかったなと、自らを振り返ったりして……。


四季の移ろいのなかで、小さな生き物たちの息づかいを感じることは、

読者の心の栄養になるだろうと思います。


小学校低学年向けのお話ですが、

成長で悩む中学年以上の子どもたちにも読んでもらいたい。


成長の悩みだけでなく、初恋の痛みにも触れていて、思春期で経験することがぎゅっと凝縮されています。


経験が浅く、語彙の少ない幼年に向けて、このテーマを共感できるよう表すことは、なかなかできません。

それだけに、貴重な童話だと思います。


この先、何度も読み返す本になるでしょう。

ari sasaki