マタギに育てられたクマ


『マタギに育てられたクマー白神山地のいのちを守ってー』

金治直美/文(佼成出版社)1575円

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本を読み始めるなり、私は山の中に入っていた。


キンと冷えた空気、キシキシと音をたてる足下の雪。

人の力など及ばない大自然の中で、ツキノワグマと対峙する緊張感。


生きるか死ぬか。


息を飲むほどのリアリティー。

ちょっとした気のゆるみが命にかかわる。動物にとっても人間にとっても同じこと。どちらが優位かなんていえない世界。それが自然なのだ。


マタギは山の神様をうやまい、厳格なルールのもとに狩りをする。

それは山から大事な命を分けてもらっていると考えるから。


こんなにも謙虚に自然を慈しみ、共生してきた人々がいるのだと知って、私は尊敬するとともに、恥ずかしい気持ちにもなった。


日頃、他の生き物といっしょに暮らしていることなど、気にもかけないで暮らしている。

でも、気づかせてもらえたことがよかった。


私はこの地に間借りさせてもらっているんだと。

人単位でものごとを考えていては、なにも見えてこないのだとーー。


ari sasaki