ミクロ家出の夜に


『ミクロ家出の夜に』

金治直美/作 (国土社)1365円

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私は中学生の頃、家出をしたことがある。

母と口論して家を飛び出したものの、2時間ほどで帰宅したというおそまつなものだ。

口論の理由は実にささいなことで、中身もなかった。

ただ、わけもなく、家庭が窮屈だった。

でも、本当に窮屈だったのは、家庭ではない。

もやもやした気持ちを表すことも、整理することもできない自分が窮屈だったのだろう。

そう、今になると、わかる。


本書の主人公・美陽(みはる)も、あの頃の私と同じ。

父親をうとましく感じ、ボロ家にこもるように暮らす日々がいやになる。

少しの自由を得るために、山の手線を一周する「ミクロ家出」をくり返すようになるが、ある日、網棚から、なぞの声が聞こえて……。


美陽が決意を持って、家族が変わるよう行動するシーンは、手に汗にぎる。

すごいアクションがあるわけでもないのに、ハラハラ、ドキドキ。そして、美陽といっしょに願ってしまう、その展開がすごい。


大人になるまでには、いくつもの傷を負ってしまうもの。

でも、いずれは、かさぶたになって、はがれていく。

かさぶたをはがすには、ちょっとの血が出たりもするが、そばで、バンソコウをはってくれる人だっているんだね。


傷つきたくないと縮こまって生きるより、思い切って、転んでみようか。


そんな勇気が生まれる物語だ。

ari sasaki