福島の花さかじいさん


『福島の花さかじいさん 阿部一郎〜開墾した山を花見公園に〜』

森川成美/文 〈佼成出版社) 1500円+税

hukusimahana


福島の花見山公園は、公園という名であっても公共のものではなく、

花卉農業を営む阿部家が所有する土地だそうです。


だれでも花を愛でて歩くことができる山には、

春になると、何十万人もの人が訪れます。


山を開放することは、所有者にとって楽なことではありません。

さまざまな負担があるにもかかわらず、

阿部家は代々、山を開放しつづけてきました。


なぜか?


その思いを知って、胸のおくが、熱くなりました。


私が最も心打たれたシーンは、P87。

一郎さんがいつものように枝を切っていたとき、

そうとは知らない見学者から、

「なにやっているんですか、花を切ったらだめじゃないですか」

と、言われたところです。


一郎さんは、自分がこの山の持ち主だとは言いそびれ、

すみませんと謝って山をおりるのですが、その顔には笑みがうかんでいた、というのです。


そんな風に花木を大事に思ってくれる人に出会えたことが、うれしかった、と。


このシーンは、私には衝撃でした。


心から花を愛し、人に喜んでもらいたいという思いだけしか、持っていない。

こんな方がいらっしゃるのかと、大げさでなく、雷に打たれたような思いでした。


私はボランティアと了解していても、人の反応によっては、

(やってあげているのに)という傲慢さを抱いてしまうことがあります。

なんて狭量な人間なんだろうと、はずかしくなりました。


戦災樹木しかり、陸前高田の「奇跡の一本松」しかり、

人は植物の生命力に励まされるものですが、


福島の桃源郷である「花見山公園」は、

山全体に注がれる阿部家の気持ちによって、

花の美しさだけでない、ぬくもりのようなものを感じさせてくれるのかもしれない、

なんてことを思いました。






ari sasaki